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インターンに落ちた話

by かやれん

7/30 日曜 曇りのち雨

7/31 月曜 晴れ

クアトロのメンバーで行った過酷で楽しいフジロックが終わり、帰路に発つ。

リュックにポーチ、折り畳みの椅子というキャンプの格好でようやくたどり着いた最寄り駅から5分ほど歩いた頃、一本の電話が。

プルルルル。プルルルルルル。

夏のインターンを申し込んでいたロッキング・オン・グループからだった。

9ヶ月前、2年生だからという理由で最終面接で落とされた企業だ。

当時はそれが悔しすぎて、それからロッキンが俺の1番の目標になった。

2月からライブハウスでバイトできるようになり、生の音楽に触れて、さらにロッキンのことを強く思うようになった。

音楽業界では最大手のロッキング・オン・グループは新卒の競争率が激しい。だからインターンが最低条件だった。

今回で2度目の挑戦。

夏季インターンはロッキン1本のみ。すべてを賭けていた。今年も最終面接へ。

面接官二人とも前回と同じで面識があり、今回はかなり手応えがあった。

でもおかしい。合否はGmailに送られてくるはずだ。電話という事は合格か。

震えながら通話ボタンを押すと、面接で久しぶりと笑顔で迎えてくれたあの面接官の声が聞こえた。

結論から言うと

今回は採用を見送らせていただきます。

体中から汗が噴き出す。立ち止まった拍子に持っていた折り畳みの椅子が肩から落ちた。

電話越しに聞き慣れた面接官の声が脳内で何度も再生される。

ふだんはメールなのですが

ただ、今回は特別に電話を差し上げました

昨日の雨でぬかるんだ靴がアスファルトに擦れた。視界がグラつき、反転した。

面接で落とした理由をどうしても話しておこうと思って

ー 面接で俺はまた、出版のことを熱く語ってしまった。

ー ロッキンは始業であり主事業が音楽雑誌なので、出版の話はむしろ受け入れられると思っていた。

ー 9ヶ月前と比べて成長した事は?

ー 今後、出版社が全て潰れたらどうする?

ー 俺はそれでも出版に携わりたいです、と自信に満ちた表情で答えた。

きみは9ヶ月前と比べて、何も変わっていなかった

変わらずに、雑誌の編集者になりたいと言っていたね

我々は主事業は雑誌だが、webやイベントなど多岐に渡るマルチな事業を展開しています。きみのような1つのことに真っ直ぐになれる人はたくさんいる。けど、それでは駄目なんです。

僕はロッキンに携われれば形はなんでも良いんです。でも面接では出版の事ばかり聞かれて、それ中心の話になっただけで

でもそれがきみの本音だと思う。

それじゃあ、何度やっても今回と同じ理由で落とされるというわけですか?

・・・・

就活では、御社を第1希望に考えていました。だから今回に賭けてたんです

企業に入ることがゴールの人は、ウチには要りません。入社して自分で変えてやる、とか、さらに上のステップを目指している若者を我々は求めています。

他にもきみに合う企業はたくさんあると思います

昨日のフジロックの記憶が蘇った。

壮大なグリーンステージでJETの雄大な音楽が響くあの空間を。

カッパを着て、ビールを片手に、椅子を広げ、雨が降って、それすらも愛おしくて、笑顔が溢れて、音楽が聞こえる、

新卒採用の試験、ロッキンの筆記試験は邦楽と洋楽2つの知識を尋ねてくる。そのためにふだんは聞かない洋楽を少しずつ勉強していた。

日経デジタルも、月々4200円で購読した。

ロッキンが主催する「音楽文.com」には毎月のように渾身のエッセイを投稿していた。

ロッキンで音楽事業に携わりたかっただけだった。編集者は、インターンが終わった後、目印に決めていけばいいと思っていた。

でも、出版に興味があると言うだけでインターンすらも落とされる。

成長するという事は何でも屋になれということなのだろうか。

多様な事業展開に耐えられる下っ端でありつつ、それでいて大志を抱けと。

ロッキンのインターン実習のために空けていた5日間が、スケジュール帳から静かに削除された。

ー 自分を見失いかけている。

9ヶ月前、面接で落ちて絶望の淵に立たされた俺を救ったのは友達の言葉だった。

「落ちるところまで落ちたら、後は上がるだけだよ」

しばらく自分探しの旅に出ます。

空間軸じゃなくて、時間軸の。

今までポパイ、ロッキンと明確な目標を掲げて他には目もくれず走ってきたけど

自分が本当にやりたい事は何なのか。

少し立ち止まって寄り道をしてこようと思います。

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